親知らず抜歯の方法について
- 下顎の親知らず(埋伏歯)を抜歯するときは、
歯肉の剥離(歯茎をめくる)⇒骨の一部削除(骨をけずる)⇒歯の削合(歯をけずる)⇒歯の摘出(抜歯)⇒歯肉縫合(はぐきをぬう)
という順序で行います。
抜歯の所要時間
上記のような処置を行いますので、埋伏歯の状態にもよりますが通常は30分程度、長くて45分位は時間がかかります。
出血については術中、後に止血を必ず確認し、帰宅後に「血が止まらない」ということが起こらないよう注意しています。
頬部腫脹(ほほの腫れ)は下の埋伏歯を抜いた後、ある程度自覚する可能性はありますが数日で軽快します。
親知らずの抜歯は、臨床経験の差によって術後の経過が左右されると思います。
![]() 術前 |
![]() 術後2週間 |
最も問題なのは術後の知覚麻痺です。
頻度は少ないですが、親知らずの根尖が下歯槽管に接触していると抜いた時の刺激で中にある神経を傷つけ抜いた側の口唇や歯茎に知覚麻痺が出ることがあります。
この状態になると、程度の差はありますが完全な知覚麻痺では回復するのに1年半~2年程度かかります。
また、神経損傷が著しい場合は知覚麻痺がさらに長期にわたって継続する場合があります(症状固定)。
パノラマⅩ線写真で親知らず根尖と下歯槽管が接触している疑いがある場合、さらにCTX線写真で三次元的に確認します。これにより明らかな位置関係が立体的に診断できます。
近年、親知らず根尖と下歯槽管が明らかに接触している場合下歯槽管損傷を防ぐため2回に分けて抜歯する方法を採り入れるようになりました。
その抜歯法は上で示した歯の削合までを通常通り行い根を抜歯せず縫合します。つまり根を残したまま終了するということです。創はほとんど問題なく経過し外側の歯肉も良好に治癒します。残された根は下歯槽管から離れて第二大臼歯に向かって徐々に移動します、半年~2年くらいたって下歯槽管から完全に離れたことをレントゲン写真で確認後抜歯します。
この方法は同じような手術を2度受けなければならないというマイナス面がありますが下歯槽管に損傷を与えないという大きな利点があります。
根尖が下歯槽管に接触 |
1回目抜歯後 |
2回目抜歯前 |
パノラマX線写真
![]() 根尖が下歯槽管に接触 |
![]() 2回目抜歯前 |
![]() 抜歯終了後 |